「美味しっ。う〜ん、温泉卵に絡めたら美味しい。真砂も食べる?」

 はい、とフォークに巻いたパスタを突き出す深成に、六郎は目を剥いた。
 まるで恋人同士のやり取りではないか。
 
 ……六郎はこのメンバーのことを、まだわかってない上に、深成ほどではないが、色恋にちょっと疎いので(慣れてないと言うべきか)、このような深成の態度に驚いたのだが、色恋に長けた千代は、真砂を好いていても、特に気にならない。
 相手が深成だからだ。
 千代からしたら、普通の恋人同士のやり取りであっても、深成がやると全く甘やかな雰囲気など感じないので、どうでもいいのだ。

 どうやらそれは、真砂も同じらしい。
 ちらりと深成に、冷めた目を向けた。

「いらん」

 あっさりと拒否する。
 それにまた、六郎は耳を疑った。

 可愛い深成の好意を無駄にするとは、なんということか。
 しかも、全く気遣いのない言葉で。

「お、おい。君、失礼ではないか」

 思わず口を挟んだ六郎に、真砂は目を上げた。

「あ?」

「折角深成ちゃんが気を遣っているのに。大体いらないにしても、もうちょっと言い方ってものがあるだろう」

 言い募る六郎に、真砂は深々と眉間に皺を寄せた。
 特に口を開かなくても、それだけで千代が空気を察し、素早く取り分けたパスタを六郎に差し出す。

「ほら、そんなカリカリしないで。真砂様は、これが普通ですわ。ねぇ?」

 にこやかに、深成を見る。

「そうだよ〜。六郎も、そんなに気にしないでいいよ。むしろ真砂がいきなり優しくなったほうが気持ち悪いよ」

「……お前な……」

 真砂が渋面を深成に向けるが、深成は意に介さず、パスタを口に運び続ける。

 いくら六郎がいきり立っても、当の深成が何とも思ってないなら意味が無い。
 納得いかないながらも、六郎はパスタを口に運んだ。