昼前、深成は真砂と共に、駅前に向かった。
駅前の大きなショッピングモールの駐車場に車を入れ、真砂は買い物へ。
「折角なんだから、お昼もその辺で一緒に食べようよ」
さっさと歩いて行こうとする真砂に、深成が声をかける。
「友達がいるんだろ」
「遠慮しなくても」
「そうじゃない。俺が面倒なんだ」
渋い顔をして言う真砂だったが、すぐに深成は、ああ、と納得した。
「面倒じゃないって。だって男の子だよ?」
「男?」
深く考えることなく、当然幼馴染とは女だと思っていた。
見知らぬ女の相手を必要以上にすることを思うと、とんでもない話だったが、どうやらそうではないらしい。
とはいえ、男だったらウェルカムというわけでもないのだが。
「わらわがねぇ、小さいときから、ずっと一緒に遊んでたお兄ちゃんなんだ。結構年上なんだけど、わらわが遊びに誘ったら、いっつも遊んでくれたの」
にこにこと言いながら、深成は真砂を引っ張って、駅へと急いだ。
改札口は人がいっぱいだ。
小さい深成は背伸びしながら、きょろきょろと辺りを見回す。
そのとき。
「深成ちゃん!」
向こうのほうから、背の高い青年が駆けて来た。
「六郎兄ちゃんっ」
その場でぴょんぴょんと跳ねながら、深成が両手を振る。
大きな荷物を抱えた青年は、二人の前に来ると、少し屈んで深成を覗き込んだ。
「久しぶり。変わらないねぇ、深成ちゃんは」
「そんなことないよっ。何年会ってないと思ってんの。わらわも大人になったでしょ?」
少し不満そうに言う深成だったが、いきなり背後から、思いっきり馬鹿にした笑い声が聞こえ、その場のほんわかした空気をぶち壊した。
声の主はわかっている。
深成はぎろりと、後ろの真砂を睨んだ。
「くくく。大人だと? どの面下げて言ってるんだか」
案の定、真砂が腕組みして笑っている。
「失礼なっ。わらわだって、立派な大人なんだからっ」
「立派な大人が、リンゴに釣られてるんじゃねぇよ」
「普通は罠なんて仕掛けてないんだって!」
きぃきぃと喚く深成だったが、不意に、ぐいっと肩を掴まれた。
「深成ちゃん。誰だい、この人」
見上げれば、六郎が少し厳しい顔で、真砂を見ている。
その好意的でない瞳に、真砂の顔から笑みが消えた。
「あ、えっとね。今のシェアハウスのお仲間なの。真砂、この人が、わらわの幼馴染。六郎っていうの」
慌てて深成が、二人を紹介する。
しばし無言で、ほとんど睨み合っていた真砂と六郎だが、やがてその表情のまま、六郎が、す、と手を差し出した。
「よろしく」
真砂も特に表情を変えることなく、仏頂面で、一瞬だけ軽くその手を握り返した。
駅前の大きなショッピングモールの駐車場に車を入れ、真砂は買い物へ。
「折角なんだから、お昼もその辺で一緒に食べようよ」
さっさと歩いて行こうとする真砂に、深成が声をかける。
「友達がいるんだろ」
「遠慮しなくても」
「そうじゃない。俺が面倒なんだ」
渋い顔をして言う真砂だったが、すぐに深成は、ああ、と納得した。
「面倒じゃないって。だって男の子だよ?」
「男?」
深く考えることなく、当然幼馴染とは女だと思っていた。
見知らぬ女の相手を必要以上にすることを思うと、とんでもない話だったが、どうやらそうではないらしい。
とはいえ、男だったらウェルカムというわけでもないのだが。
「わらわがねぇ、小さいときから、ずっと一緒に遊んでたお兄ちゃんなんだ。結構年上なんだけど、わらわが遊びに誘ったら、いっつも遊んでくれたの」
にこにこと言いながら、深成は真砂を引っ張って、駅へと急いだ。
改札口は人がいっぱいだ。
小さい深成は背伸びしながら、きょろきょろと辺りを見回す。
そのとき。
「深成ちゃん!」
向こうのほうから、背の高い青年が駆けて来た。
「六郎兄ちゃんっ」
その場でぴょんぴょんと跳ねながら、深成が両手を振る。
大きな荷物を抱えた青年は、二人の前に来ると、少し屈んで深成を覗き込んだ。
「久しぶり。変わらないねぇ、深成ちゃんは」
「そんなことないよっ。何年会ってないと思ってんの。わらわも大人になったでしょ?」
少し不満そうに言う深成だったが、いきなり背後から、思いっきり馬鹿にした笑い声が聞こえ、その場のほんわかした空気をぶち壊した。
声の主はわかっている。
深成はぎろりと、後ろの真砂を睨んだ。
「くくく。大人だと? どの面下げて言ってるんだか」
案の定、真砂が腕組みして笑っている。
「失礼なっ。わらわだって、立派な大人なんだからっ」
「立派な大人が、リンゴに釣られてるんじゃねぇよ」
「普通は罠なんて仕掛けてないんだって!」
きぃきぃと喚く深成だったが、不意に、ぐいっと肩を掴まれた。
「深成ちゃん。誰だい、この人」
見上げれば、六郎が少し厳しい顔で、真砂を見ている。
その好意的でない瞳に、真砂の顔から笑みが消えた。
「あ、えっとね。今のシェアハウスのお仲間なの。真砂、この人が、わらわの幼馴染。六郎っていうの」
慌てて深成が、二人を紹介する。
しばし無言で、ほとんど睨み合っていた真砂と六郎だが、やがてその表情のまま、六郎が、す、と手を差し出した。
「よろしく」
真砂も特に表情を変えることなく、仏頂面で、一瞬だけ軽くその手を握り返した。