「わかりました! わたくし、この休みの間にしっかりと、研修結果をまとめておきますわっ!」
「……そこまでせんでもいいが。お前の能力なら、今すぐ報告しろと言っても、ちゃんと出来るだろ」
「まぁっ!!」
真砂はきちんと千代の能力がわかっているため、お世辞でもなく事実を言っただけなのだが、言われたほうは天にも昇る勢いで浮かれている。
ちょろっと褒められ、千代はもう深成のことなど気にはならない。
「清五郎。お前たちは大丈夫なのか?」
内心で狂喜乱舞している千代から視線を切り、真砂は後方の清五郎に目を向けた。
早く行こうと駄々をこねる捨吉に引っ張られながら、清五郎が軽く頷いた。
「こっちも、さっさと帰るさ。こいつの相手はごめんだぜ」
「確かに。じゃあな」
そう言って、真砂は通りかかったタクシーを止めた。
「課長も、良いお年を」
目尻を下げたあきが、笑顔で頭を下げる。
頭の中ではこの後のことをいろいろ考えているのだろう。
そんなあきの目の前で、真砂はタクシーの後部座席に、まず深成を落とした。
そしてさらに、座席に転がった深成を、奥へと蹴り込む。
甘やかな雰囲気などない、非常に乱暴な扱いだ。
---あらら? これはどういうことかしら? 期待……しちゃっていいものかしら---
元々真砂は無表情なので、表情を読むことは出来ない。
無表情でも優しく深成を乗せていれば、まだわかりやすいが、今の態度からは優しさなど微塵も感じられなかった。
密かに首を捻るあきの横で、千代は安心したように、真砂に頭を下げた。
「じゃ、課長。年明けを楽しみにしてますわ。良いお年を」
満面の笑みで、ぺこりと挨拶する。
こちらは真砂の態度で、より一層安心出来たのだろう。
真砂は軽く頷くと、ドアを閉めた。
そしてタクシーは、二人を乗せて走り去った。
さてどうするか。
真砂は横でぐーすか眠る深成を眺めて考えた。
深成の家は知っているが、この状態では家についても起きないだろう。
それに何より、家に送り届けるにしても、玄関前に放置するわけにもいかない。
鍵が必要だ。
「……おい、起きろ」
軽く、肩を揺すってみる。
が、反応なし。
くぅくぅと気持ち良さそうに熟睡モードだ。
さすがに真砂も、人の鞄を漁るようなことはしない。
それに、勝手に人の家に入るのも躊躇われる。
勝手のわからない人の家に行くのも面倒だ(多分これが一番大きい)。
「どうします?」
ゆっくりと流していた運転手が、バックミラー越しに声をかけた。
「仕方ない。小松町のほうへ行ってくれ」
早々に諦め、真砂は運転手に行先を告げると、窓の外に目をやった。
それから約三十分後。
タクシーは真砂のマンションの前についた。
「よっこらしょっと」
運賃を精算し、深成を担ぐと、真砂はマンション玄関のロックを外して足早に中に入った。
このような状態を、他の住人に見られたくない。
幸い自分の部屋まで、誰にも会うこともなく辿り着いた。
もっとももう零時を回っているので、そうそう人に会う心配もないのだが。
真砂は家に入ると、真っ直ぐに寝室に向かった。
ベッドに、担いだ深成を落とす。
ぼふん、と跳ねたが、やはり深成の目は覚めない。
ち、と軽く舌打ちし、真砂は乱暴に深成の上着を剥ぎ取った。
そして布団をかけると、さっさと部屋を出ていった。
「……そこまでせんでもいいが。お前の能力なら、今すぐ報告しろと言っても、ちゃんと出来るだろ」
「まぁっ!!」
真砂はきちんと千代の能力がわかっているため、お世辞でもなく事実を言っただけなのだが、言われたほうは天にも昇る勢いで浮かれている。
ちょろっと褒められ、千代はもう深成のことなど気にはならない。
「清五郎。お前たちは大丈夫なのか?」
内心で狂喜乱舞している千代から視線を切り、真砂は後方の清五郎に目を向けた。
早く行こうと駄々をこねる捨吉に引っ張られながら、清五郎が軽く頷いた。
「こっちも、さっさと帰るさ。こいつの相手はごめんだぜ」
「確かに。じゃあな」
そう言って、真砂は通りかかったタクシーを止めた。
「課長も、良いお年を」
目尻を下げたあきが、笑顔で頭を下げる。
頭の中ではこの後のことをいろいろ考えているのだろう。
そんなあきの目の前で、真砂はタクシーの後部座席に、まず深成を落とした。
そしてさらに、座席に転がった深成を、奥へと蹴り込む。
甘やかな雰囲気などない、非常に乱暴な扱いだ。
---あらら? これはどういうことかしら? 期待……しちゃっていいものかしら---
元々真砂は無表情なので、表情を読むことは出来ない。
無表情でも優しく深成を乗せていれば、まだわかりやすいが、今の態度からは優しさなど微塵も感じられなかった。
密かに首を捻るあきの横で、千代は安心したように、真砂に頭を下げた。
「じゃ、課長。年明けを楽しみにしてますわ。良いお年を」
満面の笑みで、ぺこりと挨拶する。
こちらは真砂の態度で、より一層安心出来たのだろう。
真砂は軽く頷くと、ドアを閉めた。
そしてタクシーは、二人を乗せて走り去った。
さてどうするか。
真砂は横でぐーすか眠る深成を眺めて考えた。
深成の家は知っているが、この状態では家についても起きないだろう。
それに何より、家に送り届けるにしても、玄関前に放置するわけにもいかない。
鍵が必要だ。
「……おい、起きろ」
軽く、肩を揺すってみる。
が、反応なし。
くぅくぅと気持ち良さそうに熟睡モードだ。
さすがに真砂も、人の鞄を漁るようなことはしない。
それに、勝手に人の家に入るのも躊躇われる。
勝手のわからない人の家に行くのも面倒だ(多分これが一番大きい)。
「どうします?」
ゆっくりと流していた運転手が、バックミラー越しに声をかけた。
「仕方ない。小松町のほうへ行ってくれ」
早々に諦め、真砂は運転手に行先を告げると、窓の外に目をやった。
それから約三十分後。
タクシーは真砂のマンションの前についた。
「よっこらしょっと」
運賃を精算し、深成を担ぐと、真砂はマンション玄関のロックを外して足早に中に入った。
このような状態を、他の住人に見られたくない。
幸い自分の部屋まで、誰にも会うこともなく辿り着いた。
もっとももう零時を回っているので、そうそう人に会う心配もないのだが。
真砂は家に入ると、真っ直ぐに寝室に向かった。
ベッドに、担いだ深成を落とす。
ぼふん、と跳ねたが、やはり深成の目は覚めない。
ち、と軽く舌打ちし、真砂は乱暴に深成の上着を剥ぎ取った。
そして布団をかけると、さっさと部屋を出ていった。