「そ、そう……かな。うん、確かにね、わらわも改めて本気かどうかと聞かれると、ちょっとよくわかんないな。わらわ、今までそういうことってなかったじゃん? だから人を本気で好きになるとかいうのも、実はよくわかんない。だって言ってしまえば、皆嘘じゃないもの。六郎兄ちゃんのことも、あんちゃんのことも好きってのも、嘘ではないし。本気か嘘か、と言われると、皆本気なんだよ」

 そういうことではないのだが、と内心思いながら、六郎は、ふむ、と冷静に深成の心を分析した。

 なるほど、真砂が好きだ、とははっきり言ったものの、それはやはり、まだLikeの延長ぐらいなものなのだろう。
 他の皆より、少しだけ真砂が抜け出ている、といったところか。

---ふむ。それならまだ、私にもチャンスはあるわけだ---

 何せ相手は、あの真砂だ。
 深成が愛想を尽かす可能性だって大いにある。
 冷静に考えたお蔭で、いつもよりもしっかりと、深成のことを分析出来たような気がする。

「うん、わかった。ま、いいさ。深成ちゃんはまだまだ幼いんだし、焦って失敗するよりは、ゆっくりじっくり自分の気持ちを確かめればいい。彼だって、同じような気持ちだろうし」

 何となく胸のつかえが取れ、晴れやかに笑って、六郎はぽん、と深成の頭に手を置いた。
 そろそろ電車の時間だ。

「そっか、そうだね」

 にこ、と深成も笑う。

「じゃあね。帰ったら、あっちのお菓子でも送るよ」

「うん! ありがとう」

 食べ物の話題になった途端、深成の顔が輝いた。
 今までのちょっと真剣な話題など、頭から吹っ飛んだようだ。

 変に深く考えて、早々に結論を出されても困るので、六郎は安心して切符を改札に通した。
 中に入ってから、もう一度振り返って手を振る。

 そのとき、大きくぶんぶんと手を振っていた深成が、何か思い出したように、あ、と声を上げた。

「そうだ! あのね、真砂もわらわのこと、それなりに気に入ってくれてるんだよ。何かね、わらわは真砂のものなんだって」

 六郎の表情が氷結した。
 ちら、と深成が、背後に広がるバスターミナルに目をやる。

「昨夜、真砂に言われたの。わらわが真砂の傍が一番好きだって言ったら、自分もわらわを気に入ってるって。だから俺のものだって。全く、やっぱり勝手だよねぇ」

 きゃらきゃらと笑いつつ、深成は少し後退した。

「あ、バス来ちゃった。わらわ、これから真砂とお買い物なんだ。あのバス乗らなきゃ遅れちゃう。じゃあね~、また来てね~」

 改札の向こうで大きく手を振りながら、深成が駆けていく。
 その後姿を、六郎は呆然と見送った。

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 シェアハウスで二人っきりバージョン。いや二人っきりではないですが。
 二人でやたらべたべたさせようと思ったら、やっぱり雷を鳴らさないといけなくて、でもそうすると嵐の夜編と同じになってしまうので、お邪魔虫を投入。

 住人でない六郎を入れたら、ベッドの関係で真砂と深成が一緒に寝られるじゃん、とのことで、こうなりました。

 今回は真砂と深成の間に進展があったような、そうでもないような。
 六郎も、最後は意外に冷静に、深成のことを想っております。……でもやっぱり最後の最後で落とされるけど( ̄▽ ̄)

 しかしシェアハウスバージョンは長くなりますなぁ。
 これもいまいち切れ時がわからなくて、あきちゃんのエピソードも盛り込んでしまいました。

 気になる二人を覗くためだけに、始発(じゃないけど)で帰ってくる根性( ̄▽ ̄)
 あきちゃん、本気を出すとここまでやります。

2015/01/15 藤堂 左近