当の深成はそんなこと気にするでもなく、膝の上の真砂を優しく抱きながら、絵本を開いた。
 が、その瞬間、深成の顔が引き攣った。

「ま、真砂くんっ! これ、雷様のお話じゃない!」

 膝の上の真砂を覗き込むように言う深成に、真砂はこっくりと頷いた。

「やだっ! 先生、雷様怖い!」

「え~? みなりちゃんせんせい、えほんでもこわいのぉ? じゃ、ぼくがよんであげる~」

 えっとぉ、と捨吉が腹這いで絵本を覗き込む。

「やだぁ! やめて、捨吉くんっ」

 焦々と焦る深成に追い打ちをかけるように、膝の上の真砂が、ちょいと外を指さした。
 つられて外を見ると、雨が激しくなっている。

「ま、まさか……」

 深成の顔が青くなる。
 思った通り、しばらくしてから、ぴかっと稲妻が光った。

「きゃああぁぁっ!!」

 深成が叫び、膝の上の真砂を抱き締める。
 子供を庇おうというのではない。
 丸っきり庇ってもらうほうだ。

 いきなり抱き締められ、若干驚いた顔をした真砂だが、自分に抱き付いてふるふると震える深成に、ふ、と笑みをこぼした。
 そして深成の肩越しに、六郎を見る。

 ふふん。

 そんな擬音が、六郎には聞こえた。
 そしてさらに、真砂はきゅ、と深成に抱き付き、小さく欠伸をする。

「あ、真砂くん、眠い?」

 は、と深成が、少し身体を離して真砂を見る。
 が、真砂は甘えるように、深成の胸に顔を埋めた。

「しょうがないなぁ。よしよし」

 いつの間にか他の子供たちは寝入っている。
 雨で薄暗いこともあり、皆早くに落ちたようだ。

 深成は真砂を抱いたまま、そろ、と横になった。
 真砂がぎゅっと深成の胸にしがみついているお蔭で、深成も寝ないと、真砂が寝転べないのだ。
 そしておそらく深成も、真砂がくっついていてくれたほうが、怖くないのだろう。

「ね~んね~ん~ころ~り~よ~♪」

 真砂を抱きながら、深成が優しく歌う。
 そんな深成を、六郎は固まったまま凝視していた。

---くっ! こ、こいつめ。いくら子供だからって、やっていいことと悪いことがあるだろうがっ! み、深成先生の胸に顔を埋めて……深成先生に抱かれて、子守唄までっ---

 最早相手が五歳の子供ということなど関係なく、嫉妬に苦しむ六郎なのだった。

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 年齢逆転、お子様真砂バージョン。恐ろしいことに、あまり変わりませぬ( ̄▽ ̄;)
 唯一通常バージョンと違うところといえば、遠慮なく深成に甘えるところでしょうか。

 そして一言も喋らない。
 いや、子供の真砂は、何故か喋らないイメージなんですよ。

 本編でも、子供の頃の真砂って、モロ野良猫みたいなイメージで、それこそ寄ってくるもの全てに牙をむく感じ。
 本編の初めのほうの真砂でも、たぶん子供の頃に比べたら丸くなってるというか、マシなんだと思いますよ。
 ……そう考えると、真砂ってほんとに恐ろしい( ̄▽ ̄;)

 そして六郎は、真砂が子供であっても、やはりあしらわれるという。
 あきちゃんは子供のせいか、まだまともです( ̄▽ ̄)

2014/10/23 藤堂 左近