「じゃ、漫画に描いてあることなんて、嘘っぱち?」

 恋愛経験もない深成には、まだまだ『あり得ること』がわからない。
 修羅場だってあり得ると言えばあり得るのだが、それは人によるのだ。
 この人ならこう、ということなどが、まだ全然わからない。

 真砂は前を向いたまま、少し首を傾げた。

「そうとも言えんかな」

 靴を履きながら、ぼそ、と言う。

「気が多いか、そうでないかの違いだろ」

「?」

 やはり不安そうに見る深成からクッキーの紙袋を受け取ると、真砂は一瞬だけ、彼女をじっと見た。

「いろんな女を一度に相手にするのを何とも思わん奴なら、ああいう修羅場もあり得る、ということだ。生憎俺は、そんな面倒はご免だが」

「先生はそうでもさ、女の人が放っておかないでしょ。先生、格好良いもん……」

「知るかよ、そんなもん。何とも思わん女に付きまとわれても、迷惑なだけだ」

 まるで女嫌いのようだ。
 深成は微妙な顔で真砂を見た。

「先生。女の子に興味がないわけでは……ないよね?」

 恐る恐る聞いてみる。
 うっかり男のほうに興味があるようなら、全ての努力が水の泡である。

「馬鹿。それならバレンタインにこんなん貰ったり、何よりお前に鍵をやったりせん」

 深成がバレンタインに何か作るということは、事前に宣言していた。
 嫌ならその時点で断ればいいのだ。
 特に真砂の性格なら、気を遣うことなく拒否するだろう。

「そっか」

 やっと、深成が少し笑顔になった。
 真砂は玄関のドアを開けつつ、ちら、と振り向いた。

「安心しろ。よっぽど気に入った奴でない限り、家になんか上げないさ」

 にやり、と笑って出て行く。
 深成は呆然と、その場に立ち尽くした。

「……って先生っ!! 先生はわらわのこと、気に入ってくれてるってことーーっ?」

 しかも、『よっぽど!!』と心の中で付け足し、深成は廊下で、万歳三唱で踊り狂うのだった。

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 ……真砂、犯罪( ̄▽ ̄)
 まぁどういうつもりで鍵を渡したのかはわかりませんが。

 ほんとにクッキーのためだけか、はたまた下心ありか。……いや、ないな。
 どう考えても、この深成は可愛い子犬にしか思えないでしょう。

 深成が借りた漫画の題名は、サブタイトル含め、ここにありそうだな〜。何か特集の題名みたい。
 てことは、左近がちゃんと書いてる話よりも、小咄のほうがサイトの趣旨に合ってるってことですか( ̄▽ ̄)……微妙。
 そしてこの漫画を、おそらく深成は、あきちゃんに借りたのでしょう。

 しかしこのバージョンは、思い切り本編と全く同じ年齢設定です。……何だ、この違いは。
 いや、深成はあんまり変わってないかな。
 現代の二十歳って、まだまだお子様なんだよな〜。本編の真砂より、ちょっと幼いかもです。

 それにしても、やっぱり小学生と大学生と考えると、現代では色恋には発展しませんな。
 女の子からしたら、そりゃ大人な男に対する憧れはあるでしょう。
 でも男からしたら、やっぱり無理だよ( ̄▽ ̄;)完全ロリコンになってしまう。

2014/10/6 藤堂 左近