「さて。じゃあ風呂にでも入ってろ」

 食べ終わった皿を運びながら言う真砂に、深成は、頷きかけて固まった。
 僅かに雷が聞こえる。
 そそくさと、深成はグラスを運びつつ、真砂に近付いた。

「ま、また雷が……」

「ん? そうか? ああ、風呂に入ろうにも、着替えがないか」

 何でもないように言い、真砂が浴室に向かう。
 すかさず深成も、真砂を追った。

「湯、張るか?」

「シャワーでいい。シャワーだったら聞こえないもん」

「……徹底してるな」

 呆れたように言い、脱衣所のボックスからバスタオルを出す。
 ふと、横にある洗濯機を見た深成は、あ、とあることに気付いた。

 下着の替えがないではないか。
 ブラはともかく、パンツを二日はくのは嫌だな、と思い、いい事を思い付く。

「課長、お洗濯物溜まってるじゃん。わらわがお洗濯してあげるよ。だから、先に課長が入っててよ。お皿も洗っておくから」

「洗濯ぐらい、自分でやる」

「遠慮しないでいいって。泊めてもらうんだし。それにさ、横で洗濯機がごとごといってたほうが、雷も聞こえないもん」

 深成の雷恐怖症は並ではない。
 それに、この理由も嘘ではないのだ。

「……確かに……」

 真砂も納得し、自分の洗濯物を洗濯機に放り込んだ。

「じゃ、後は頼む」

「はぁい。ごゆっくり〜」

 にこにこと手を振り、深成はキッチンに戻って洗い物を始めた。

---さすがに一緒に洗うのは気が引けるけど、お風呂場で洗って、課長のお洗濯物と一緒に干せば、わかんないよね。浴室乾燥だろうし、朝までには何とか乾くでしょ。うん、我ながら、良い方法を思い付いた---

 えへへ、と一人でほくそ笑みながら、深成は食器に続いて、鍋やフライパンも綺麗に洗った。