【キャスト】
キャバ嬢:深成 ママ:狐姫 No.1キャバ嬢:千代
客:真砂
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
とある歴史ある町の、小さなキャバクラ。
その夜も、遅くにやって来た真砂の相手をひとしきりし、深成は閉店と共に、彼を送り出した。
「ありがとう。あのね、今月も真砂のお陰で、わらわ、三位なんだ」
「そうか。ま、その位置ぐらいをキープしてりゃ、店も文句は言わんだろ」
「ん、でも。真砂が来てくれなかったら、わらわ、全然駄目だもん。いっつも千代がヘルプに使ってくれるから、最下位は免れるけど」
真砂は深成の唯一の太客だ。
来ればかなりの金を落としてくれる。
真砂一人の金で、下のほうをうろうろしている深成を、毎月三位まで押し上げてくれているのだ。
聞けば真砂は、ホストなのだという。
ずば抜けた売り上げで、常にNo.1なので、深成一人を三位に押し上げるぐらい、わけないことなのだそうだ。
「ねぇ真砂。何でいっつもわらわを指名してくれるの?」
少しだけ真砂を送りながら、深成はずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
自分で言ったとおり、深成は大した売り上げを上げられない。
どうも子供っぽくて、女の魅力に乏しいのだ。
そこが可愛いと言って、気に入ってくれるお客もいるが、そういった人は、せいぜい何人かまとめて呼んでくれる、他のキャストの太客だ。
深成だけを本指名してくれる客は、真砂だけなのだ。
ちろりと深成は、傍らを歩く真砂を見上げた。
No.1ホストだけあり、見かけは申し分ない。
いかにもホストというようなチャラさもないし、接客していても、妙なことは一切しない。
女には不自由しないだろうに、何故よりにもよって、深成のようなお子様を選ぶのか。
店には千代のような、顔もスタイルも抜群で、接客態度も完璧なキャストもいるのだ。
元々真砂が初めて来店したときも、千代が接客した。
初回なので、決まったキャストはいない。
そういう場合は何人かのキャストが相手をし、その中から本指名を選ぶのだが、てっきりそのまま千代が担当になると思っていた。
いつものように千代が深成も呼んでくれたのだが、真砂は特に、深成に何の反応も示さなかったのだ。
が、その次真砂が来店したときに指名したのは深成だった。
そしてそれ以来、一切他のキャストは受け付けずに、深成一人で今に至る。
「わらわ、呼ばれるのってヘルプだけだもん。真砂が来てくれるようになってからさ、初めて指名で呼ばれるようになったんだよ。もうね、最近わらわ、呼ばれたらそれだけで、真砂が来たってわかるんだ」
ちょっと嬉しそうに言う深成に、真砂は目を細めた。
深成の先の質問には答えず、代わりにくしゃ、と深成の前髪を乱す。
「あ! 真砂、来週お誕生日だよね。何かお祝いしなきゃね!」
「そんなもん、別にいい」
素っ気なく言う真砂だったが、深成はふるふると首を振った。
「だって、日頃のお礼もしたいし。わらわが出来ることって限られてるけど、きっとお祝いするね! びっくりさせるから!」
「……ああ」
最後の『びっくりさせる』に、ちょっと妙な顔をしたが、真砂は小さく頷いた。
そして軽く手を挙げ、歩いていく。
「楽しみにしててね〜」
真砂の背に声をかけ、深成はぶんぶんと手を振った。
キャバ嬢:深成 ママ:狐姫 No.1キャバ嬢:千代
客:真砂
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
とある歴史ある町の、小さなキャバクラ。
その夜も、遅くにやって来た真砂の相手をひとしきりし、深成は閉店と共に、彼を送り出した。
「ありがとう。あのね、今月も真砂のお陰で、わらわ、三位なんだ」
「そうか。ま、その位置ぐらいをキープしてりゃ、店も文句は言わんだろ」
「ん、でも。真砂が来てくれなかったら、わらわ、全然駄目だもん。いっつも千代がヘルプに使ってくれるから、最下位は免れるけど」
真砂は深成の唯一の太客だ。
来ればかなりの金を落としてくれる。
真砂一人の金で、下のほうをうろうろしている深成を、毎月三位まで押し上げてくれているのだ。
聞けば真砂は、ホストなのだという。
ずば抜けた売り上げで、常にNo.1なので、深成一人を三位に押し上げるぐらい、わけないことなのだそうだ。
「ねぇ真砂。何でいっつもわらわを指名してくれるの?」
少しだけ真砂を送りながら、深成はずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
自分で言ったとおり、深成は大した売り上げを上げられない。
どうも子供っぽくて、女の魅力に乏しいのだ。
そこが可愛いと言って、気に入ってくれるお客もいるが、そういった人は、せいぜい何人かまとめて呼んでくれる、他のキャストの太客だ。
深成だけを本指名してくれる客は、真砂だけなのだ。
ちろりと深成は、傍らを歩く真砂を見上げた。
No.1ホストだけあり、見かけは申し分ない。
いかにもホストというようなチャラさもないし、接客していても、妙なことは一切しない。
女には不自由しないだろうに、何故よりにもよって、深成のようなお子様を選ぶのか。
店には千代のような、顔もスタイルも抜群で、接客態度も完璧なキャストもいるのだ。
元々真砂が初めて来店したときも、千代が接客した。
初回なので、決まったキャストはいない。
そういう場合は何人かのキャストが相手をし、その中から本指名を選ぶのだが、てっきりそのまま千代が担当になると思っていた。
いつものように千代が深成も呼んでくれたのだが、真砂は特に、深成に何の反応も示さなかったのだ。
が、その次真砂が来店したときに指名したのは深成だった。
そしてそれ以来、一切他のキャストは受け付けずに、深成一人で今に至る。
「わらわ、呼ばれるのってヘルプだけだもん。真砂が来てくれるようになってからさ、初めて指名で呼ばれるようになったんだよ。もうね、最近わらわ、呼ばれたらそれだけで、真砂が来たってわかるんだ」
ちょっと嬉しそうに言う深成に、真砂は目を細めた。
深成の先の質問には答えず、代わりにくしゃ、と深成の前髪を乱す。
「あ! 真砂、来週お誕生日だよね。何かお祝いしなきゃね!」
「そんなもん、別にいい」
素っ気なく言う真砂だったが、深成はふるふると首を振った。
「だって、日頃のお礼もしたいし。わらわが出来ることって限られてるけど、きっとお祝いするね! びっくりさせるから!」
「……ああ」
最後の『びっくりさせる』に、ちょっと妙な顔をしたが、真砂は小さく頷いた。
そして軽く手を挙げ、歩いていく。
「楽しみにしててね〜」
真砂の背に声をかけ、深成はぶんぶんと手を振った。