【キャスト】
課長:真砂 派遣事務員:深成 女子社員:千代・あき
医師:きし献血センター医師
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「おい皆、問診票を渡す。それを記入して、書いてある時間に大会議室へ行け」

 朝一で、真砂は自分の課の者全員に、一枚の紙を配った。

「健康診断かぁ。ああ、気が重い」

 あきがため息をつきつつ言う。

「痩せてないしさ。去年よりも太っちゃったかも。体重測りたくない」

「おほほほ。そんな心配、日頃から気をつけていれば、無用なものよ」

 あきの後ろから、千代が高笑いしながら、片手を腰に当ててふんぞり返る。
 確かに千代はプロポーションも抜群だ。
 言い返すことが出来ず、あきは黙って下を向いた。

「おら、お前もだ」

 ぽかんとしている深成にも、真砂は問診票を差し出す。

「え、わらわも?」

 受け取った問診票に目を落とし、深成は顔をしかめた。

「採血~。わらわ、注射嫌い~」

「子供か。注射が初めてなわけでもあるまい」

 呆れたように言い、真砂はふと、深成の問診票に目を落とす。

「俺と同じ時間だな。丁度良い。連れて行ってやる」

 にやりと笑う。
 少し後ろで、あきは羨ましそうに見ていたが、深成は不満そうに口を尖らせた。
 そして、あれ? と首を傾げる。

「同じ時間って? おかしくない? 男の人も女の子も一緒なわけ?」

 恥ずかしいじゃん、と言う深成に、真砂は冷たい目を向けた。
 深成を頭の先から足の先まで見、心底馬鹿にしたように言う。

「何を考えてるんだ。お前なんぞ、男に混じっててもわからんぞ」

「それは言い過ぎでしょっ! わらわだって、それなりに大人なんだからっ」

「どこが。俺の目の前で全裸になったって、何とも思わん自信はあるがな」

「きーっ! 見たこともないくせにーっ」

「見る気もせん」

 無表情で冷たく言う真砂は、よく考えたら立派なセクハラ発言連発なのだが、フロアの女子社員は皆ぼぅっと彼に見惚れていて、そんなことは気にならない。

 そんなことよりも、同じ課なのだから、多少のずれはあっても、皆大体同じ時間である。
 上手くすれば、真砂のあられもない姿を拝めるかもしれない、という妄想が渦巻いているのだ。
 主に、ぎらぎらした目を向けている千代と、頬を赤らめているあきの頭の中で。

 実際には法定検診で脱ぐことがあるのはレントゲンと問診ぐらいで、それはさすがに個室だろうから見えないと思われるが。