「それにしても参ったわね。こんな姿を見られたなんて」

困ったように笑う先輩だが、その顔ですら美しい。美しい人はやはりどんな表情をしていても、美しいらしい。羨ましい。

「…先輩の魔女っ子コスプレ姿をですか?」

確かに先輩にこんな趣味があったとは驚きだが、確かにとても似合っているので良い。もう、なんだって良い。

先輩が可愛すぎるので、先輩の魔女っ子コスチューム姿も、不自然ではないし、むしろ可愛いくらいだ。可愛いは正義だ。

「あ、これはコスプレでもなければ、マジックでもないのよ」

ボソッと呟くような七星先輩の声。

「え?」

「だって、本物だから」

ふふっと笑う姿はまるで盛りの花のようである。けれど、ちょっと、待って。

「それって…?」



「私、魔法使いなの」



突然の爆弾発言に、頭が、思考回路が、景色が、停止した。

暫くの間、瞬きと呼吸だけを数回繰り返す。

「…いやいやいやいや!先輩、今日はエイプリルフールではないですから、そんな嘘、言わないでくださいよ!あはは、先輩がとてつもなく可愛いからもう何だって許しちゃいますけどね!」

あはは、と作り笑いをする私に先輩は優しく語りかけた。

「突然のことで混乱するのもよく分かるわ。この世界ではあり得ないものね。でもね、これは本当のことなのよ。私は魔法使いなの」

笑顔だけどその目だけは真剣で、どうやら嘘ではないらしい。

「…って、ちょっと待ってください。先輩が魔女っ子だということはですよ、もしかして北斗先輩も…」

「えぇ、魔法使いよ」

何てこった。

なんてファンタジーな先輩達なんだ。

何それ、魔法って現実世界に存在してたの?ニュースにも取り上げられてないんですけど!

「…そうね、月子ちゃんにはちゃんと説明しようかしらね」

そういうわけで、夕暮れの公園にて、七星先輩による魔法に関する特別講座が始まったわけであります。