ねぇ、とデューク先輩は皆に問いかけた。

「なんか皆倒れてるみたいだけど、コレ全部北斗と七星のせいなんでしょう?」

辺りを見渡しながら美しすぎる微笑みを浮かべている。

しかし本当は決して笑いごとではない。

藍羅先輩と一緒にいるときいつも思うのだが、過度な美しさは罪だ。

「私、というか、北斗よ。北斗がこの眼鏡を外すからこんなことになったの」

「…僕、悪い、違う」

反論した北斗先輩は少しムッとしているようにも見えた。

「まぁ、北斗は極端に美人だからね。それに素顔の北斗ってフェロモンが半端ないから、こうなっちゃうのも致し方ないね。こればかりはどうすることもできないし。

でも多分、このイケメンがあの"古城北斗"だとはバレていないと思う。普段とかけ離れ過ぎているからね。だからきっと、北斗と七星に大勢の人が付きまとうようなことはないだろう」

それを聞いて美人双子はホッと安心したようだった。確かに、人に付きまとわれるのは大変だ。藍羅先輩を見ていていつも思う。

「…僕、眼鏡、外す、した、理由…」

「理由は、それを渡す時に注目を浴びないようにするため」

デューク先輩は北斗先輩の肩にポン、と軽く右手を乗せた。

「万が一恋人同士だと思われたら面倒なことになっちゃうもんね。でも北斗が眼鏡を外せば皆倒れてくれる…そういうことなんだね、北斗?」

北斗先輩は無言で頷いた。

「…流石デュークね。読心に長けているんだから」

腕組みした七星先輩が呟くように言った。

読心か…え、ど、読心? つまりその字の如く、心を読んだってこと!? 何それ、いつ読んだの!? というか、人間ってそんなこともできるの!?

尊敬の眼差しでデューク先輩を見つめていると、デューク先輩はクスッと美しく笑った。

「俺が心を読んだって分かった七星の方が凄いと思うよ、俺は」

その笑顔の奥に何かある、と直感的に思ったけれど、それが何なのかは分からないし、聞いてはいけないような雰囲気さえあった。

「…お互い様ね」

「…そういうことみたいだね」

ふふっと笑った美形の二人。笑顔ってこんなにも美しいんですね。その様子はまるで花が咲き乱れているみたいです。

あぁ、本当に良かった。皆が倒れていて。そうじゃなかったら流血騒ぎになっただろう。それも、鼻血の。