奥から声が聞こえてきた。どうやら、誰かが七星先輩を呼びに来たらしい。そう言えば、先輩たちって部活中でした。

「七星、そろそろ再開するって先生が」

視線を移動させると、

「あれ、月子ちゃん? それに北斗もいるの?」

袴姿が恐ろしいほど似合っている、とても凛々しいデューク先輩だった。

「…お邪魔しています」

ペコリとお辞儀した。

乙葉なんて顔を真っ赤にして、言葉さえ発せることができないようだ。全く、どこまで可愛いんだこのお人は。

「ようこそ弓道部へ。…あれ、藍羅は?」

ニッコリ微笑まれたかと思ったら、周りをキョロキョロと見渡しながら問われる。

「藍羅先輩ならもう帰っちゃいましたよ」

やっぱり、藍羅先輩のことを聞くんだね。本当に、一途なんだね。まぁ、あの美しさに魅了されれば、こうなってしまうことも当然と言えば当然なんだけど。

ちょっと呆れつつ、さらっと答えた。

「え、帰っちゃったの!? もう、酷いなぁ、俺を置いていくなんて」

そう言って少し拗ねるデューク先輩が何とも可愛らしい。なんだかそこら辺の女の子よりずっとずっと可愛い。

「本当に、藍羅先輩一筋ですね」

思わず本音が口から溢れた。

「それほどでも」

エヘヘ、と笑った先輩の笑顔は素敵、だけれども、

「褒めてはいませんよ。…しかし、藍羅先輩は、結構大変ですよ?」

「ん? 天然だから? それとも、恋愛経験がないから?」

首を傾げる先輩。

「それも両方ありますけど…とても、鈍感なので」

自分の気持ちも分からないほどに、と心の中で呟いた。

しかしデューク先輩ときたら、

「分かってるよ。純情だもんね、藍羅は」

でもそんなところも大好きなんだよ、なんて笑顔で言い切れるデューク先輩が凄いと思います。

藍羅先輩のこと、本当に分かってるのかな?藍羅先輩を泣かせたりしたら、私がただじゃおかないんだから。