「あっ、そういえば僕の名前の『そう』って、その『想』じゃなくて独創性とかの『創』です。直しといてください。」


「ちょっ、何で知ってんの?」


後ろを見なくても、山本さんの呆気にとられた顔と、急いでメモを取る姿が頭に浮かんできて笑える。


「秘密です。」


「ハハ、そっか。
気をつけていけよ、トンネルの中けっこう暗いから転ぶと危ないぞ。」


本当にこの人は優しい。


「山本さん!」


後ろを振り返る。


「ん?」


「本当に色々とありがとうございました!」


「おう!」


おじぎをして見上げた空は、相変わらず薄暗くて灰色だったけど、もう1人の時に見えた空じゃなかった。