中身が子供のくせに、
本当に大人っぽいところがある。
薬の副作用ってやつなのかな?
もし、このままルルが元に戻らなかったら…
どうしたらいいんだろ。
あたしは女子高生。
あいつは子供。
それは変わらない
たとえ、身体が大きくなっても
10歳の男の子なんだから。
『柚』
あたしを呼ぶ彼の声は…
まるで、10歳とは思えないくらいに
低くて…優しくて………温かい。
ルルが大人になってから、
もう1ヵ月が経っていた。
成長したルルにも慣れて、
普通の日常を送り始めた。
早くルルを戻さないといけないのに。
その方法すら分からない…。
「柚、帰ろう」
放課後、ルルが横からひょこっと顔を出した。
「あ、うんっ」
…何か、だんだんルルが
たくましくなっている気がする。
ルルは……今の自分を受けとめてるのかな?
やっぱり、元に戻りたいって………。
「…ルル」
「ん?」
「………ルルは、今の姿を…」
と、言いかけた時、
「安藤、お前に会いたいって子が来てるぞー!」
と、クラスの男子がルルを呼んだ。
ルルに会いたい子?
教室の入り口の方に視線を向けると、
別のクラスの女子が恥ずかしそうに
立っていた。
…なるほど、ルルに告白するのか。
その子は、可愛くてフワフワして
おとなしそうな子だった。
ルルって本当にすごい…。
「悪いけど、柚と話してるから無理」
ルルは視線をすぐにこちらに戻した。
えぇっ……、ちょっと。
「ルル、行ってきなよ。ルルに話があるんだよ」
「でも、今は柚と話してるもん…」
ルルは子供のように頬を膨らませていた。
…いや、子供だけどね。
「話なんて、家でも出来るんだからいいじゃん。ほら、行ってあげて!」
ルルの大きな背中を押して、
その子の所へ向かわせた。
告白なんて、簡単に出来るものじゃない。
きっと、さっきの子は
悩んで告白するって決意したんだ。
だから…告白を聞けるだけでも、
聞いてあげて。
………さて、と。
今日は1人で帰ろうかな。
何か、ルルのいる生活が当たり前になってる。
毎日毎日………
柚、柚、柚…って
話しかけてばっかりで。
最初はうっとうしかったけど、
今では慣れてる自分がいる。
そんな自分が少し怖い。