「安藤瑠々那だ。今日、転校してきた。柚の…ー」
「従弟なのっ!!ルルは、あたしの従弟であって、恋人とかじゃないの!!」
ルルが答える前に春馬に説明した。
春馬くんだけには………。
ルルのつま先を足で踏んづけると、
「いたっ…」と呟きながら柚香から離れた。
ルルのバカァァ!!!!
ルルを軽く睨み付けていると、
その様子を見ていた春馬が笑い始めた。
えっ………春馬くん?
「アハハハ、君たち従弟は面白いんだね」
えっと…とりあえず、
誤解されてないから良かった。
「なら、俺も安心して柚香ちゃんと話せる」
っ……?今、何て…?
すると、ルルは柚香を自分の方へ引っ張り
春馬をジーっと睨んだ。
「…渡さないから」
え、え?
何の会話してるの??
2人が敵対視していることに
気づかなかった………
「…柚、何で怒ってるんだ?」
その日の夜、ルルが尋ねてきた。
春馬くんの前で抱き締められてから、
あたしはずっと不機嫌だった。
家に帰ってきても
ルルとは目も合わせなかったから、
ルルは寂しそうに目の前に座ってきた。
「…抱き締めたことに怒ってるのか?」
「そうよ!!しかも、春馬くんの前で………!」
「何で…あの男の前でされたくないんだ?」
それは…………。
春馬くんのことが………
~プルルルル~
シーンと気まずくなっていた空気を
消すかのように、携帯の着信音が鳴り響いた。
その着信音は、従妹のお母さんからだ。
「…もしもし?」
「柚香ちゃん、こんばんは。あれから、男の子の世話頑張ってるかしら?」
「あ、は、はいっ!」
…ルルが大きくなってる、なんて言えない。
「明日、そっちへ男の子を引き取りに行くわね」
えっ!?明日!?
「それでねー、明日の夜なんだけど…私が用事で隣街まで出ていってる間に薫を預かってて欲しいのよ」
薫は、あたしの従妹の名前。
本当に生意気で、子供のルルとそっくりなの。
正直、苦手なんだけど…
おばさんの頼みだから仕方ない。
「わ、分かりました」
「ありがとう、助かるわ。じゃあ、夕方伺うわね」
そう言って電話は切れた。
…どうしよう。
ルルが大きくなってるから
おばさんに見せれない。
かと言って、ルルを見せなかったら
心配されるし。
でも…ルルは小さくないし………。
「誰から?」
ルルは首を軽く傾げた。
「…従妹のおばさん。明日来るって…」
「何で来るんだ?」
「本当は、ルルを引き取るつもりだったんだけど…」
これじゃあ、無理だよね。
「…もし、俺が小さかったら引き取ってもらうつもりだったの?」
ルルの表情が険しくなった。
………ルル?
「…そんなに、俺って邪魔なんだ」
「ち、違うよ…?ただ…あたしも高校生だから不安だったの」
柚香の言うことに耳を傾けていないのか、
ルルは拗ねて部屋に戻っていった。
「ルルっ…!」