パーティー前日、出来ればスルスに出向いて最終確認をしたいと思ったものの、この日に限って講習会だったり別の社食に用があったりで、時間が取れずにいた。
しかも、そろそろ業務が終わるという時に、うちが経営しているレストランでトラブルが発生。
フライヤーが故障したということでその対応に駆り出され、結局帰ることが出来たのは夜の十時頃だった。
こんなに遅くまで仕事することは稀だ。しかも明日は一大イベントだっていうのに……ついてない。
もうスルスに寄ることは諦めていたが、今日はレストランからマンションへ向かう途中に、メルベイユが面している道を通ることになる。
雷雨の中、照明が消えているメルベイユの前に差し掛かると、車の中からスルスがある三階を見上げた。
こんな時間に誰かいるわけがない。ただ何気なく見上げただけだった。
……それなのに。
たしかに三階の小さな窓から明かりが漏れている。あれは食堂ではない、休憩室だ。
「まさか……春井さん?」
今まで仕事してたのか? 明日のために?
何か問題があったのだろうか。だとしたら、何故俺に言ってくれない……!?
急に焦燥感に駆られ、車をUターンさせてメルベイユの駐車場に入る。
そして車を降りようとした、その時。稲妻が黒い空を切り裂き、一際激しい雷の音が響き渡った。