腕を組んだ専務は、ゆっくりと息を吐き出す。



「……スルスが休業するなんて初めてのことですよ。あなた方にはそこまでの力量はないということですね、残念だ」



まるで“能無し”と言われているようなその言葉は胸にこたえる。

実際そこまでのことはこなせないのだから、そう言われても仕方ないのだが。



「まぁたしかに、何が出来て何が出来ないかを把握しているのは重要なことです。何も考えずにすべて引き受けて、結局痛い目を見る者こそ愚かですからね」



ソファーに預けていた背を離して前屈みになり、膝の上に肘をついた専務は「でも」と言葉を繋げる。



「“出来ない”と言うのは、自分達が力不足であることを露呈することだ。そんな恥さらしのような役目を、あなた自身が受け持ったのは何故ですか?」

「え?」



思ってもみなかった質問をされて、一緒ぽかんとしてしまった。

恥さらしでも何でも、無理なものは無理。それを交渉するのは当然のことだろう?



「椎名さんはきっと、僕が色々と嫌味を言うことをわかっていたでしょう。自分のメンツが潰されることになりかねないにもかかわらず、あなたはその役目を何の躊躇いもなく引き受けているように見える。普通ならチーフである春井さんが行うことのはずですからね。何故あなたがそこまでするのですか?」



専務は、単純に疑問に思っていることを聞いているように見える。

彼が何を思ってこんなことを言うのか、俺にはわからない。