「あなた方が表に出て、以前の水野くんのような失態を犯さないという保証はありますか?」

「もちろん、来客の方々に絶対に失礼のないようにします。私自身も当日はホールへ出ますから、目を光らせていますので。飲み物を配ったり補充するのも我々が行いますし」

「へぇ、椎名さんも手伝うと。マネージャーというのは雑用でも何でもやるんですね。それは面白い」



……本当にいつも上から目線なんだな、この人は。

イライラする気持ちを抑えていると、なんだか心に無数のトゲが生えてきそうだ。


意地悪そうに口角を上げた専務だが、とりあえずその件は了承してくれた。問題は次の件。



「あともう一つ、失礼は承知で頼みたいのですが、当日の食堂をお休みさせていただきたいのです」



この交渉は予測していなかったのか、彼は意外だとでもいうように数回瞬きをする。



「……ランチの提供を行わないということですか?」

「はい。私達の都合で大変申し訳ないのですが、本社からのヘルプを入れても、あの人数では限度があります。通常の業務を行いながらパーティーの料理を作るのは難しい。質の良い料理を提供するためにも、パーティーの方に専念させていただきたいのです」



もちろん、出来ることならランチも提供したいのだが、現実問題それは困難だ。

見栄を張って両方やろうとするよりも、一つのことに集中して確実に成功させる方が賢明だと思う。

“ニ兎を追う者は一兎をも得ず”ってやつだな。