「万人受けするメニューでありながら豪華さも出せそうですし。まぁいくらメニューを見たところで、本番の出来がすべてなわけですが」



わかってるよ……と言いたい気持ちをぐっと堪えていると、彼は疑うような眼差しを向ける。



「これは本当にすべてあなた方が?」



……やはり。そう来ると思い、もう一つ持ってきたノートを差し出す。



「これは、私達がメニューを考える時に記録していたものです。日付もすべて書いてありますので」



ノートにはいつ誰がどんなメニューの案を出し、どれをボツにしたか等、証拠となりそうなことが細かく記載してある。

春井さんが几帳面にこのノートを取っていてくれて助かった。

彼が疑うのを予想してこれを借りてきたのだが、正解だったな。



「……さすが、抜かりないですね」



専務はノートをパラパラとめくると、どこか満足げにも見える笑みを浮かべた。



「わかりました。メニューはこれでお願いします」

「ありがとうございます。それと、こちらからもいくつかお願いがあるのですが」



俺の言葉にピクリと反応を示した専務を、真正面から見据えて口を開く。



「ローストビーフを切り分けるサービスを、私達に行わせていただけませんか?」

「……あなた方に、ですか」



冷ややかな目をする彼はソファーに深々と座り、足を組んでこう言った。