――本物……だよね?

 思わず、いや、思ってしまったから思考の中から漏れたワケなのだが。
 心の中でそう呟いてしまった。
 気になってしまい、仕方なく口をついて出てしまった一言……そんな感じだろうか。
 その不用意な言葉がどのような結果をもたらしてしまうのか、それは容易に想像ができる。

 しかし、その結果を予想していてもなお、確かめなければならないことである。
 それもまた否定できない事実であった。

 言ってしまった後、気まずい雰囲気が場を支配する。
 だが、私はそれ以上の言葉を続けることも出来ず、それでも隼人くんの言葉を聴くために視線を逸らすことも出来ず……ただ、隼人くんが答えるのを待った。

(あ? 俺が本物じゃなかったら……俺は何者なんだよ!?)
 
 語気も荒く、隼人くんはそう答える。
 明らかに、私の言葉が癇に障ってしまった様子だ。
 この隼人くんからすれば、晴天の霹靂のような私の疑問。

 怒り出すのは当然の流れではあると思う。
 しかし……その怒り方すら私の中では疑惑を深めていく種となってしまっているのだ。

 目の前に居る隼人くんが本物であって欲しい、でも私がそう思えば思うほど、この隼人くんは私が言って欲しいセリフを言っているだけなのではないかという――拭い切れない疑惑が私の頭を駆け巡る。