[隼人side]


「ん……ぅ……」
少し色気のある声を出しながら、陽菜がゆっくり目を開けた。


「おはよう、陽菜」
「………」

返事もしないで俺をじっと見つめる陽菜。
たぶん、いま必死で状況を把握しようとしてるんだろうな……。



「陽菜、自分で待ち合わせ場所に来たのは覚えてる?」

「うん」

「そのあとは?」

「………」
うつむいてなにも答えない。
まぁ、相当ツラそうだったし、覚えてるわけいか。


「んー……。簡潔に言うと、今回のデートは延期」
俺がそう言った途端、バッと顔を上げた陽菜の目から大粒の涙が溢れていた。