*   *   *




「…ふう」



一通り仕事を終え、休憩するべく俺は執事用の部屋へ向かい出した。



と、




「有馬くぅん!」


「…宮本?」




前方からパタパタと駆けてくる宮本を見て、俺は立ち止まった。


一体そんなに急いでどうしたんだ。


宮本が近づくと同時に、ふわりと甘い香りが漂ってきた。




「これ、有馬くんに!」


「…え」




サッと差し出された袋に包まれたケーキに視線を落とす。


…宮本が俺にケーキ?



は、初めてだ。




「あ、ありがとう」


「うん!この間のお礼なのぉ!」


「…この間?」


「ほら、有馬くんが私のこと抱き締めてくれた日のことよぉ!」


「え」


「あの日のおかげで私、横山さんに告白しようって決意出来たのぉ!」





………………は?




「な、」


「私も有馬くんみたいにちゃんと行動に移さないとって!だから、有馬くんのおかげなのよぉ!」




なんだそれは。


…結局、俺のあの努力は何も伝わってなかったってことなのか。



さすがにショックだ。

…もう、立ち直れないほどに。