「絵美って好きなこいる?」
麻里が少したってからぼそっと聞いてきた。
 私は、川に石ころを投げながら上の空で聞いていた。
「ううん。麻里はいるの?」
「となりのクラスの高橋くん」
「へぇ、なんで」
「委員会の時やさしかったから」
「ふうん、そうなんだぁ。ねぇ、好きになるって何?
 どんな感じ?」
「うーん。なんだろう、わかんない。
 でも、なんかドキドキして胸がくるしくなるかな。」
「くるしいのに好きなの?」
「うん。くるしくなるくらい好きになるってかんじ。」
「それっていいことなの?」
「わるいことじゃないんじゃない?
 麻里は、好きな人がいると楽しいよ。」
「くるしいけど楽しいんだね」
「うん。くるしいけど楽しい。なんでだろう。」
「なんでだろうね。どうして好きになるんだろうね。
 好きは愛?恋?」
「わかんない。好きは好きなの。
 絵美にも好きな人ができたらわかるよ。」
「そうかな。わかるかな。」