“チョコレート教室”と言うのは、玲央くんの副業のようなものだ。

ちなみに、手芸部のほうが“本業”ね。


友達(女の子)に頼まれたのをきっかけに、中学のときから続けている。

お菓子作りが得意な玲央くんがみんなの“先生”になるんだよね。


「今年もやるよ。」


バレンタインは来月。

玲央くんの後ろに見えたカレンダーを見て、なんとなく思い出しただけなんだけど…


「マコちゃんも来る?」

「へっ?」

「まだ人数に空きがあるから、今からでも大丈夫だよ。」


何やらカンチガイされたらしい。


「私はいいよ。」


聞いてみただけだし。

誰かにあげる予定も、そもそも行事に参加する気すらないから。


「そう?残念。」


特に気にする様子もなく、再び手元のシュシュへと視線を移す玲央くん。


「1回くらい参加してみればいいのに。みんなで作ると楽しいよ?」


その言葉を聞いて、私の頭の中に、一瞬にして『フリフリのエプロンをつけて、キャピキャピと笑い合う女の子集団+玲央くん』の図が浮かんできて…


「いやいや。遠慮しときます…」


私には場違いすぎるって。