「そろそろ帰ろっか?」


冬真くんはそう言うと
明らかに自分の家とは逆方向に向かって歩いている。

「送るよ」

「えっ?大丈夫だよ!!家近いし冬真くん家、逆方向でしょ!?」


(私って本当可愛くない。
すごく嬉しいのに…全然素直になれないよ)


馬鹿だよな〜‥そう落ち込んでいると
頭をコツンと叩かれて

「これぐらい格好つけさして?」

と少しぶっきらぼうに言い

バックを持っていない左手で
私の右手を掴むと、自分の学ランのポケットに突っ込み
そのまま手を繋いだ。

(充分かっこいいです…)

そう思ったけど、恥ずかしくて
とてもじゃないが言えるはずもなく。

ただただ、冬真くんの手の温もりに答えて
(これだけは伝えなくちゃ!)
そう思い

「本当にありがとう」

聞こえるか聞こえないかの瀬戸際なる小さな声でそう呟くと


彼は何も言わずにギュッと手を握り返してくれた。