………え?







何が?って……。







そっか。






「或斗に連れ去られたんだ…。」





そう呟く。




するとなぜか龍翔は舌打ちをして。





「あいつの事はもう忘れろ。」





あたしを睨んできた。






………あれ?






あたし…何かしたっけ?





龍翔を怒らせるようなことをした覚えはないけど。





一生懸命に考えるけど、本当に頭がぼーっとして答えが見つからない。







……あぁ。





そっか。














あたし聖龍の注意を無視して出て行ったからか。





そしてあっけなく捕まってしまった。





でも最初こそ怖かったけど……別にそれでも良かったかなーって思ってる部分もある。





まぁ、もう今となってはどうでも良いけど。





「……或斗は良い奴だよ。」






____龍翔達よりは。






あたし忘れてないんだから。





あなたたちが或斗達にしたこと。





あたしにしたこと。






最低な人達だっていうこと。











すると龍翔はまた舌打ちをして。





……何なの、一体。







龍翔から視線をそらし周りを見渡すと、見覚えのある部屋。





聖龍の総長室と言われていた部屋だと分かった。






………はぁ。





連れてこられたんだ…。





「……あたし、もう家に帰るから。」





こんなとこにはいたくない。






家でゆっくりと寝たい。





でも一人でいるのは寂しいな…。





あんなことがあったのに、まだ人の温もりを求めているあたし。





本当バカだ。
















「はぁ?何言ってる?」






でもそれを…龍翔は許してくれない。





鋭い視線であたしを射抜く。





でもそれに怯むようなあたしじゃないってあなたは…知ってるでしょ?





「…今日は用事があるの。それに慣れない環境よりも家でゆっくりさせて欲しい。」






「無理だ。絶対に許さねー。今日はここに泊れ。」






……間を入れずに返ってくる答え。





だからイヤなの。





もうさっきから頭はぼんやりするし、すっごく眠いし。






……本当ふざけてる。








「……分かった。分かったから……。せめて携帯を返して。」





って、あたし……自分でも何言ってるんだろう。





こんなところ居たくないのに。





まだ一人でいる方がまし。




でも……強引な龍翔に、なぜか逆らえない。










そして結局ここに泊まることになってしまい。





着替えは龍翔が用意してくれるらしいけど…。





……はぁ。





本当憂鬱。





あたしは総長室にずっと籠っている。





ここから外に出れば諷都もいるし、チビもいるし…。





……はぁ。






何回目か分からないため息を吐いたところで。






携帯がまた鳴った。




携帯はあたしがここを飛び出したとき、忘れてたからさっき返してもらった。






今日は男からの着信とメールが途絶えない。





いちよう全員に一斉送信で「姫になんてなってないから大丈夫」と送ったけど…。





みなさん、あたしが聖龍の姫になったことで遊べなくなたっと勘違いをしているらしい。





それほど聖龍の知名度はすさまじく、みなが恐れ、また憧れているのだ。




……あたしは知らなかったけど。













そして携帯の充電が……残りわずか。





ったく。





もう家に帰りたい。





ベッドの上でゴロゴロとしながらそう思う。





なんて思いながらも、少し居心地よく感じていたり。





……ないな。





家が一番だよ。






龍翔は毒牙の件でまだ忙しそうに動いているからあたしは放置。






まぁ…傍にずっといられても困るけど。





あたしがここにいる必要ないじゃん。






「……もう、帰りたい……。」






そう、ポツリとつぶやく。
















……あれ?





帰ればいいんじゃん。





よし。





龍翔もいないし、諷都君やチビもあたしを引き留めるなんてことはしないでしょ?





帰れるじゃないか。






何でさっさとこうしなかったんだろう?





あたしはニヤリ、と笑いベッドの上から降りた。






そして携帯だけ制服のポケットに入れる。





そのまま総長室の扉をそっと開け、ゆっくりとリビングらしきところへと向かう。












そこには……メガネと諷都君だけがいた。






2人ともソファーでパソコンをいじったり、電話をしたりしている。






……下へと続く階段に行くためにはここを通るしかない。





………ヤダ。






あいつらと話もしたくない。






でも_____逃げるためには、仕方がない。








覚悟を決めて、足を踏み出そうとしたとき________。