咲哉side end*
「莉々香…。本当に可愛いね、お前は。」
「うんっ!でも__の方がカッコイイよ?カッコいい__が大好き!」
「ははは。それは光栄だなぁ。俺も莉々香の事が大好きだよ?可愛い、可愛い、俺の莉々香」
「……っ!すっごく嬉しい!ずっと一緒にいてね?ずっと傍に居てね?」
「もちろん。約束する。何かあれば絶対に莉々香を守るからね。」
朦朧とする意識の中、ユラリ、ユラリと……心地よい揺れを感じる。
暖かく、心地よい。
あれ……。
あたし……何を言っているの?
誰に向かって好きって言ってるの?
頭の中にあたしの少し高い声と、男の人の会話が響く。
あたし……こんな事誰かに言ったっけ?
誰に……?
そもそもあたしってこんなこと言う事無かったよね?
変なの……。
そしてまた、からだの揺れを感じながらも意識を深く沈めていった。
あの会話は過去の事だったのか。
それとも未来の会話なのか。
それは、今の莉々香には決して分からない。
_________分かるはずがない。
そして____。
首筋に感じるわずかな刺激で目が覚める。
………え?
あれ……?
「……ん……。」
そっと体を動かすと……。
何かが腕に当たった。
何………?
目をゆっくりと開ける。
少し視界が霞んで見にくいが、直ぐに普通の視界に戻った。
………何か、ボーっとする。
腕に当たったものを見ると、ただの枕だった。
……なんだ。
枕か……。
そして、また眠りにつこうとしたとき……。
ある疑問が浮かび上がった。
……あれ?
あたしのベッドの上に枕って……置いてなかったよね?
………置いてあったっけ?
……頭が上手く回らない。
凄い眠い。
まぁ、いいや。
次こそまた寝ようとしたとき…。
「起きたか?」
誰かに、声をかけられた。
………え?
慌てて起き上がり、振り向く。
そこには龍翔がいた。
「なん、で……?」
「莉々香、覚えてるか?」
龍翔はベッドに腰掛けて座っていた。
………え?
何が?って……。
そっか。
「或斗に連れ去られたんだ…。」
そう呟く。
するとなぜか龍翔は舌打ちをして。
「あいつの事はもう忘れろ。」
あたしを睨んできた。
………あれ?
あたし…何かしたっけ?
龍翔を怒らせるようなことをした覚えはないけど。
一生懸命に考えるけど、本当に頭がぼーっとして答えが見つからない。
……あぁ。
そっか。
あたし聖龍の注意を無視して出て行ったからか。
そしてあっけなく捕まってしまった。
でも最初こそ怖かったけど……別にそれでも良かったかなーって思ってる部分もある。
まぁ、もう今となってはどうでも良いけど。
「……或斗は良い奴だよ。」
____龍翔達よりは。
あたし忘れてないんだから。
あなたたちが或斗達にしたこと。
あたしにしたこと。
最低な人達だっていうこと。
すると龍翔はまた舌打ちをして。
……何なの、一体。
龍翔から視線をそらし周りを見渡すと、見覚えのある部屋。
聖龍の総長室と言われていた部屋だと分かった。
………はぁ。
連れてこられたんだ…。
「……あたし、もう家に帰るから。」
こんなとこにはいたくない。
家でゆっくりと寝たい。
でも一人でいるのは寂しいな…。
あんなことがあったのに、まだ人の温もりを求めているあたし。
本当バカだ。