「……ャ。……い…た、い。」
「俺は無理矢理女を作ったことなんてない。近寄って来た女を適当に相手しているだけだ。それを俺が無理矢理女を作って、勝手に捨てただと…?勘違いにも程がある。いいか、よく聞け。そんな話は……デタラメだ。」
龍翔はそう言って、女から手を離した。
女はそのまま床にしゃがみ込む。
「……う、そよ…。だって、あの子………。」
「本当に本人の口から聞いたのか?」
龍翔の言葉で、女はビクッと体を震わせた。
「だって……あの子は或斗の大切な子だったのに…。あの子が、他の男と関係を持ったなんて……そう思うしかないじゃない………。」
「…お前の勝手な勘違いで莉々香を傷つけた。ふざけるなよ。」
龍翔……。
「………み、な。」
その時、龍翔に殴られた男が、そっと起き上がり女に声をかけた。
「………お兄様………?」
女はそっと龍翔越しに男を見る。
もう、女の目には憎しみなど浮かんではいなかった。
「……美奈…。こんなことになるんなら……言っておけば良かった……。美奈には、何も気にせずにただ或斗と幸せになって欲しかっただけなんだ。でも………俺のせいだ。俺が、早く……美奈に、或斗に伝えていれば……。」
男は苦しそうに言葉を繋ぐ。
龍翔の視線も男に向けられていて、女は訳の分からないというような表情をしていた。