「まあ3人でいったほうが結局は落ち着くんだからね、3人で行こうか。」



こうしていつも3人で行くことになる。


わたしと千樫が2人だけでデートしたことなんて


考えてみれば数え上げられるくらいしかないんだろう。




「ふたりはさあ、」




立ち上がって千樫に電話をかけようとしたところ


まだ立ち上がろうとしない譲に呼び止められる。



「うん? 」


譲はいつものように微笑んだ。



「結婚とか考えてるの?」



「え?」




頓狂な声が出てしまったわたしを、譲はもう一度笑う。



彼がたくさん笑うときは



彼が彼なりに物事を考えようとしているときのサインだ。



「どうしたのよ、急に」



わたしもわらって返す。


まだ先の話でしょ、するとしたって。


なに言ってるの譲は。



そういって譲の目を見ずに笑う。


わたしがよく笑うときは


物事をできるだけ考えないように誤魔化すサインだ。



「いや、来月で伊澄も二十歳だし。 やっぱりふたりはそういうのもかんがえてんのかなって思っただけ。」




譲はからかうように笑ってたちあがった。


行こっか、そう言ってわたしの前を歩く。




「まだ、わからない。」



わたしの今の精一杯の答えを譲の背中に返した。



彼はくるっと上半身だけ振り返らせて


にっと笑って見せた。