これは……ボクと君との
糸がお互いを惹き合うから?





だけど……このままでは……
ボクが見透かされてしまう……。



鬼のボクが捕らわれてしまう。


縋るようにドアの向こうの気配に集中させて、
有香の存在を見つけると、
生吹に寄せて名前を紡ぐ。


鬼としてのボクが、
有香を利用した瞬間、再びノックがして扉が開く。



「依子さま、
 いらしてたんですかっ」

入ってきたのは、
マネージャーの有香とスタッフの中山。


「有香さん、お邪魔してます」

「依子さまもどうぞ、
 お席の方へ。
 
 中山、依子さまとお友達を
 お席へご案内して。

 YUKI、もうすぐ本番よ。
 ステージ前の……
 瞑想に入る時間よね。
 
 時間になったら呼びに来ます。
 今は集中してちょうだい」


有香はボクの願い通り、
二人の元からボクを連れ出した。


入れ替わりに、
二人がボクの控室から出たのを確認して再び戻り、
ゆっくりと扉を閉じた。



……救われた……。





静まり返った部屋。



ボクは、一人目を閉じて神経を集中させていく。


今日、ボクが伝えたい世界をイメージして、
その世界の為に……このステージの全てを賭す。




遠い昔、ボクが交わした約束を果たすために。


なのに……集中できない。


……心が乱れる……。