桜鬼のボクは、
和鬼の心を殺した。





和鬼の名を借りて
人の世へ焦がれる。





せめて咲鬼姫の魂がその世界へ転生するまで
見届けたいと。




それが……桜鬼であるボクが和鬼へ出来る
唯一の罪滅ぼし。




和鬼と桜鬼。
二つの指名を帯びた相容れない鬼。



和鬼の愛した親友(とも)を
摘み取った忌み嫌われ続けた鬼。



一番身近にいる和鬼にすら疎まれ続けたボクは
行く場所もなく、行き倒れて咲久の温もりを知った。





皮肉にも、咲久の孫として
この世に生まれたのは、
あの日、桜鬼のボクが鬼の世界から追放した
和鬼の最愛の想い人。





和鬼を想い、桜鬼(ボク)を想い、
愛されることを求め続ける
壊れそうな少女……咲。





その咲は……ボクを受け止めて
包み込んでくれる。





ボクの居場所をくれた。






だけど、どれだけ、年月が過ぎて行っても
鬼の世界の誓約は変わることはない。






桜鬼神として、
ボクが神を拝命したその日から。










1.同族に悟られてはならぬ。

1.同族に情けをかけてはならぬ。

1.正体を悟られてはならぬ。

1.人と鬼の境界を守る
 守護神となれ

1.任務遂行を目撃されたものは
 そのものから関わりし記憶の全てを
 消すべし

1.国王がその職務を放棄したと
 判断したその時……
 王に審判を下せし唯一のものなり