「咲と過ごしやすいように少し力を使ったんだ。

 この家でボクが住むってことは由岐和喜。
 YUKIの自宅になる。

 公に咲を守るには、事務所だけでなく
 記憶を通してボクと咲の関係を
 認識させておかないと咲がまた辛い目にあうよ」



……和鬼……。


そこまで……
考えてくれてたの?


「それに咲久」

「お祖父ちゃん?」

「ボクがボクとして
 住み続けると気を遣うよ。

 その記憶がある限りは……
 ボクは守り神でしかないから。

 だから……少し記憶を改ざんした……。

 この行為が許される範囲か
 どうかなんて……ボクにもわからない。
 
 だけど……今なら思うんだ。
 
 誰かの為に……つく嘘は……
 『白い嘘』って言う。
 
 だったら誰かを思って……
 自分を守るための罪は『白い罪』って
 思ってもいんじゃないかなって」

「白い罪?」

「そう、白い罪」

「そうだね。

 和鬼の……その、白い罪が
 私をこの先の未来を守ってくれる
 大きな礎になっていくんだね」


私の隣で柔らかに微笑む和鬼。




こんなにも愛おしい日が訪れるなんて、
想いもしなかった……一年前。



今はこんなにも、
穏やかな時間が流れる。




「……咲……」


和鬼が私の名を呼び、
その唇をゆっくりと重ねる。



柔らかな唇が触れ合い私を潤していく。



和鬼の手がゆっくりと
私の体に触れていく。




その夜、私は心から和鬼と触れ合った。