「お祖父ちゃん、ただいま」

「あぁ、お帰り。
 和喜。仕事はどうだった?」

「順調だよ」

「仕事も大切だが、
 咲のことも頼んだよ。

 和喜は……ワシが決めた
 咲の許婚なんだからな。

 ゆくゆくは……
 ワシの神社を支えていってくれよ」


時代劇を見ながら一人お酒を飲みつつ
返事をするお祖父ちゃん。



えっ?
何?


和鬼が
私の許婚?



「うん。
 咲はちゃんと幸せにするよ。

 お祖父ちゃんに言われなくても
 ボクの最愛の人だからね。

 咲と……部屋にいるから」



何がどうなったか、わからないままに
立ち尽くす私の手を今度は和鬼が力強く握る。




和鬼に手を惹かれて、
いつもの歩き慣れた階段をあがり私の部屋の隣。



空き部屋になってた一室の扉を開く。



何もなかった部屋に広がるのは、
テーブル、ソファー。

ご神木の大きな写真。

そしてベッド。



和鬼の生活スペース。




「和鬼……何?
 どうなってるの?

 私……夢、見てるの?」


月並みだなーって思いながらも
これしか思いつかなくて……
自分の頬をムギュっとつねってみる。


「痛っ」


痛みがある。

抓った頬をさすりながら
今のこの全てが夢ではなく
……現実なのだと実感する。