「大丈夫。
 何があっても私は和鬼の傍にいる。

和鬼を私は悲しませるかも知れない。

 私は人で、和鬼は鬼。

 鬼の一生よりも人の一生は短いから。

 だけど私は何度でも生まれ変わって
 この桜の木の下で……和鬼を見つけ出す。

 今なら……そう思う。

 私は和鬼の愛した咲鬼そのものではないけど
 咲鬼の記憶を抱いた存在。

 だから私がいなくなって、次に見つけ出すときは
 その人は咲鬼と私の記憶を抱いて
 ……ちゃんと……和鬼の傍に辿り着く」



……そう……。


今なら……
そう思える。



何度……離れても……
この……桜の木の下で……
私たちは……巡り会える。




「そうか。

 その言葉に……二言はないな、咲」


お祖父ちゃんの言葉に
私は力強く頷いた。




和鬼は私に光をくれた。




もうその光を失いたくないから。




「もう大丈夫ね。
 ほらっ、一花帰るよ。

 司、明日学校で」


そう言うと、司は一花先輩と一緒に坂ノ下に停めてあるらしい
家の車へと歩いて行った。


その夜、私たちは三人揃って家へと帰る。


ご神木の桜の木は、私たちの新しい生活を
応援するように……桜の花弁を
静かに舞い踊らせる。



家へと続く坂道を降りて玄関の扉を
ガラガラっと開く。