お祖父ちゃんはじーっと私の目を凝視する。


逸らしちゃ絶対にダメだ。
試されてる。


私もより力強く、
お祖父ちゃんを見つめる。


お祖父ちゃんの視線が和鬼へと注がれる。



「……咲久……」


和鬼がお祖父ちゃんの名前を
小さく紡ぐ。



「わかった。
 
 そうなる……運命であったな」


お祖父ちゃんは独り言のように
……紡いだ……。


「有難う。
 お祖父ちゃん」


私はお祖父ちゃんに
抱きついた。


お祖父ちゃんは何も言わず私の髪をなでた。



同時に見守ってくれていた、
一花先輩も司も喜んでくれる。


和鬼は、再び意識を集中させて
YUKIとしての由岐和喜の姿を象る。



「あっ、そこに居た。
 和鬼さん」


YUKIの姿を形成して、
ようやく視えるようになった司が呟く。



「YUKI、私……お帰りなさいって
 伝えていいのよね?

 貴方の迷いは晴れて?和鬼君」


一花先輩は、和鬼に優しい眼差しを向ける。


「ただいま」


人としての声を失っていたはずの和鬼の声が、
ゆっくりと広がった。




「咲、咲が自分で選んだのなら
 私が反対する理由はない。

 ただし人と鬼の恋仲。
 
 この先いろいろと険しいこともあるだろう。

 咲に、その覚悟は出来ているか?

 一時の感情で和鬼様の心に寄り添っているだけなら
 のちに更に苦しまれるのは和鬼様だよ」


お祖父ちゃんが、和鬼を気遣うようにゆっくりと告げる。