目が合った。 一瞬のことだったけれど、確かに視線を感じた。 しかし窪川が列からはみ出ることはなく、一分の乱れもない彼らはあっという間に闇の中へと消えていった。 「吉田?」 東の声に我に返る。 「なんでもない。見覚えのあるジャージだなって思って、ちょっとかんがえてた」 「そう」 菜々子に合わせて遠ざかる一団を振り返る東だが、その口ぶりからさしたる関心はないようだ。 「あのさ、吉田。ちょっと、聞いてもいいかな」