シャイな彼が一所懸命女子に話しかけるというところからしてもそれ以外にはないんじゃないかというふうにも思えて、

菜々子はつとめて明るく振舞いながら、胸はふさいでいく一方だった。



そんなとき。



前方から、軽快な足音が折り重なるようにして聞こえてきた。

ランニング中の、見たところ高校生らしい男子の集団である。


一方通行の標識が示すとおりの狭い道幅。


菜々子と東は互いに戸惑いの視線を交わらせるも、こればかりはと、身を寄せるようにして歩道の隅に控える。


二列に並んだ一団が口々に謝罪の言葉をかけて走り抜けていく。


たくさんの白い吐息が帯のように後ろへ流れ、彼らの周りだけがわずかにかすんで見えた。



そのとき。


あれ、と菜々子は思った。


このジャージどこかで……と眉をひそめた次の瞬間。



菜々子の眼前を、厳しい顔つきの窪川が通り過ぎた。