一方、腕を庇うように掴んだ男の目じりには涙が浮いていた。


どれほど強い力で握っていたのか。



「よくもやったなこのやろう。名前は!? 学校は!?」

「知りたかったらまず、てめぇの会社と名前を名乗りやがれ」

「あん?」

「女を殴ろうとしてたじゃねぇか。誤魔化せねぇぞおっさん」

「あいつが最初に俺にぶつかってきたんだ。なのに謝ろうとしなかった。だから俺は常識を教えてやろうとして……。そしたらあの小娘が」

「お、おじさんだって、余所見してたじゃな、い、です、か……」

「んだと!?」



ひゃっと有正は首をすくめ、菜々子の後ろに引っ込んだ。

足りない身長を補うように菜々子は背中を反って有正を守る。



「やんのかこら!」



と、窪川がいきなり眼を飛ばした。



「やめろってば!」



小柄な男子が困ったように声を上げた。