「いててててて! やめろクソッ! なんなんだよ、最近のガキは、ったく」


男は悶える。


見かねた連れが眼光を飛ばすが、エースの誇りと驕りが結集した自信の権化ともいうべき窪川の、年季の入った睨みの前にはまるで歯が立たない。



「だいじょうぶか?」



やけに勝ち誇ったような顔で窪川が振り返る。


何かを期待するようなその視線に、菜々子は顔をしかめ、ふいっと背けた。


次の瞬間、窪川につかまれたままになっていた男がカッと目を剥いた。



「いっ、痛ッ。いってーよ! てめ、やめろ、離せよくそっ!」


「なっ、なにしてんだよ!」



そのとき、窪川の名前を叫びながら彼と同じジャージを着た小柄な少年が血相を変えて飛んできた。



「あ。あのひと」



菜々子の後ろから有正がつぶやくような声で言った。



「知ってるの?」

「うん。こないだ部活の顧問に言われて窪川の学校に行ったとき、あいつと一緒にいた」



小柄な少年が腕を引くと、窪川は不承不承、手を離した。

マネージャーなのだろうか。

高慢ちきで我の強い窪川に一発で言うことを聞かせるとは、なかなかのひとかどだ。