「おい、よせよ。高校生だぞ」

「うるせぇ!」



連れがなだめるも、ぶつかられた男は気が短い性質らしく、寛容に退く気はなさそうだ。



「おい小僧、人様に迷惑かけたら目ぇ見て謝れって学校で教わらなかったか、なあ? だいたい、怖がって女の後ろに逃げ込んでんじゃねぇよこの腑抜け。前出て謝れ」

「やめてください!」



ぴしゃりと言って、菜々子は、有正の腕を掴もうと伸ばされた男の手を思い切りはたいた。



「痛って。なにすんだこのやろう!」

「今の発言は撤回してください。そんなの差別です。どうして女が男を庇っちゃいけないんですか」

「んだと……!」

「だいたい、あなたの言い方にも問題があります。そんな頭ごなしに怒鳴りつけたら謝れるものも謝れないじゃないですか。公衆の面前で相手を萎縮させて、言いなり然と謝らせるなんて、それが正しい大人の対応だと思ってるんですか!」



男の形相がひときわ険しさを増した。


だが菜々子も一歩も引かない。


有正を泣かせるわけにはいかないのだ。