「菜々ちゃんにはもっと相応しい男がいるよ。無理だと思うけど、一日でも早く忘れよう。あいつには、ただ、悪い意味での思い入れが強すぎるんだ」


そんなのに展望なんかありゃしないよ。

もっと建設的にかんがえならなきゃ。

菜々ちゃんだってわかってるでしょ、それくらいのことは。



(それくらいのこと)



菜々子は息を吐いた。


はっきり言う。


でも、それがただの無神経とはちがうから、それがわかるから。


普段の、ひょうきんで軽薄な物言いを封じた有正の言葉ほど、ずさずさ心に突き刺さるものもないと思った。



(今日のあんた、惨いわ、ちょっと)



ファミレスを出ると、ふたりは並んでいつもの帰路を行く。

日を追う毎に寒さはいっそう厳しさを増し、うんざりするような曇天が垂れ込めていた。


雪になりそうな気配までは感じないけれど、自然と足の運びは速くなる。



「そ、そんなにじっと見つめないでよ」



足が速くなる理由にはもうひとつあった。


ファミレスを出てからというもの、有正が目線を逸らしてくれないのだ。