――は。



はあ? 



刹那、菜々子は戦慄した。



有正のずれた人格ついて憂慮していたら、いきなり窪川のことを思い出していた。


と同時にあの公園でのキスが脳裏を過ぎり、菜々子は慌てて打ち消した。




「じゃあわたしはこのチーズムースと紅茶のセットにする!」

「ぼくも同じのでコーヒーにしよう」

「あっ、ちょっとあんた、自分のは自分で決めなさいよ」

「決めたでしょ」

「何も考えてない顔してた」

「冬はいつもだいたいこんな顔だよ」



なんだよそれ。



「ご注文はお決まりでしょうか」



菜々子たちと同じ歳ぐらいのウェイトレスが有正ににっこりと微笑みかけた。



「これを二つ」

「お飲み物は?」

「コーヒーと紅茶で」

「かしこまりました。以上ですか?」

「はい」



お辞儀をすると、ウェイトレスは踵を返した。


その瞬感、菜々子は妙な視線を感じた気がして顔を上げた。



「どしたの?」


「いや」



若いウェイトレスは厨房へと歩き出していて、顔を見ることはできなかった。