坂城ふゆ。高校二年生。


双子の兄である《なつ》は、中学三年生のとき事故で死んだ。

出来が良くみんなに愛されていた兄と、出来が悪く友達も少なかった自分。

幼い頃は比べられることも少なく、自分の方がなつより出来ることもたくさんあった。
しかし小学生になると、兄は勉強が出来て弟は出来ない。兄は運動が得意で、弟は不得意。と、双子ながら比べられることも多くなった。


「なつまた100点とったの!すごいわねー、今日の夕飯はなつの好きなものにしようね」

「ふゆは?…何?この点数。なつと同じテストなのにね。まあ良いわ。夕飯まで勉強してなさい」

「なつくん、運動会でリレーの選手なんだって?おまけにアンカーって聞いたよ。すごいなあ、なつくんは!」

「ふゆくんも、なつくん見習って頑張るんだよ」


大人たちの言葉は心に深く刺さった。

それから俺は、なつが好きなものを嫌いなった。

なつが好きなものを好きになれば、また比べられる。 それなら嫌いなるしかない。

幼いながら考えた、精一杯の自己防衛だった。