彼は残り少なくなっていたワインを最後の一口で飲みきると、もう一度そのビー玉の瞳を私に向けた。


「申し遅れまして。辻大志です。君の名前は?」


漢字はおおきいこころざしって書くんだけどね、無難だろう、と言いながら空中にその二文字を書いて見せた。

つじ たいし。
その澄んだ響きは、彼にぴったりだと思った。


「神田明季です。…よろしくお願いします」


こうして面と向かって名乗るのって恥ずかしい。しかも知り合いである真さんがいる前で。
ぺこりと頭を下げ、その続きで、あかるいに季節のきです、と大志さんと同じように漢字の説明をする。