話を聞いている限り、結構仕事に生きてそうな人だなあ。
ところで。この人の名前ってなんだろう。
「ねえ。君の名前を教えてくれる?」
心の中の言葉が声に出てた!?とつい言いたくなるほどのグッドタイミングで彼から私に話が飛んだ。
私が彼についての分析を進めるうちに、どうやら私に話の矛先が向いていたらしい。
視線が合わさって、彼のビー玉のような瞳がうつる。
吸い込まれるようにその視線にとらわれる。
「大志(たいし)、俺の店でくどくんじゃねぇ」
「名前を聞くぐらい、マナーの一つだろう?」
そう彼が言うと同時に、あ、と声が漏れた。
自分も名乗っていないことに気が付いたようだ。