彼はおそらく真さんがアヴァンシィを始めたころを知っているのだろう。二人の話はどんどんと昔話に入っていき会話に花を咲かせている。
手持無沙汰になった私は二人の話にこっそり耳を傾けつつ、でもどこかではっきりと彼のことを意識していた。


拾った言葉を自分の心の中でこっそりと整理すると、彼はかの有名な繊維商社のサラリーマンらしい。

ここ2年はフランスに駐在し、ヨーロッパのアパレル情勢を読みながら買い付けを行ったりニーズを探ったり、そういった仕事をしていたよう。
ヨーロッパでの買い付けの仕事に後任が入ることになったらしく、久しぶりに日本に戻ってきたのだ。

フランス駐在の前は、アジア圏に相当数の出張を重ねていたらしい。インド、マレーシア、中国等々。ということは仕事人生の半分は海外だったのだろう。

短大卒業後すぐに働きに出て4年経つけれど、しがない派遣OLの経験しかない私にとって、出る話すべてがまさに新鮮そのものだった。