そのあとは真さんもだいぶ落ち着いたのか、最近仕入れた年代物のワインをあけると。
自分と彼、そして私の分までご丁寧にゴブレットに注いでくれた。
話を聞いている限り、彼らは旧友のような間柄らしい。
長い間音信不通だった彼と、その不躾な行いを根に持っている真さん、といったところか。
「冗談は置いておいて。お前今までどこいってたんだ」
「フランスだよ。2年間の長い長い海外出張」
「…あー。確か商社勤めだったな」
長い間連絡をよこさなかったのは、時計の針が止まっていた以外の立派な理由があるらしい。
だったら初めからそういえばいいのに、真さんをからかいたかったのか、彼はネタばらしをした今少し残念そうな面持ちだ。
初対面の印象よりも、だいぶフランクな人なんだ。