「なぁに、美弥。目で追っちゃって。知り合いだったのお?」

「…ううん。違ったみたい」



少なからず落胆した表情を見破られてしまったのだろうか。美弥はニヤニヤとこちらを見つめてきたが、それ以上追及はされなかった。

聞かれたとしても、対して話せるほどのネタもないのだけれど。
一度だけでしかも時間にしたら20秒ほどの、そんな些細な出会いを今でも思い出してしまうなんて。若さと青さあふれる中高校生じゃあるまいし。

気を取り直して顔をしゃんとしめるために、頬をぺちんと叩いてみる。

そんな私を面白そうに、美弥は声をあげて笑った。