その人を一言で言えば、お人形さんのようなだった。

雪のような白い肌にピンク色のつやつやした唇。きれいに茶色くカラーリングされた髪はこの間立ち読みした女性誌の表紙を飾った人気女優と同じだ。
特に瞳はビー玉のような潤いと輝きがあって…。でもこの瞳誰かと似ているような…。

そんな容姿にぴったりと合った薄いピンクのスプリングコートを羽織った彼女は、きょろきょろと店内を見回した。そして“連れ”の大志さんではなく真さんを見つけると、その綺麗な瞳に一杯の涙をためて、


「真様!!!」


___カウンターというキッチンと隔てる壁がなければ、抱き着いていそうな勢いだっただろうと思う。


前上司、現雇い主を、どこかの国の王子とも勘違いされかねない様付けし放った彼女は。
実際飛びつきはしなかったものの、キッチンに一番近い部分のカウンターまで駆け寄って。
両手を華奢な肩幅の倍以上に広げて真さんにハグを乞うという大胆な行動を見せつけてくれた。