「………妹みたいな存在として見てくれてると思ってたんだもの」
『…明季から、マスターと長年の知り合いだって聞かされた時、部外者の私でもすぐにピンときたよ。度合いはわからないにせよ、…マスターは好意持ってるだろうなってことぐらいは』
じゃなきゃ、そもそも路頭に迷ったしがないフリーターを雇うわけないでしょ。そう美弥は言うと、私たちの間に一時の沈黙が下りた。
____実は、私が真さんと距離をとっさに明けた瞬間に見えた、あの表情が頭から離れない。
私を本気で捕らえようとしたハンターのまなざしと相重なるように。
やっちまった、とでも言いたげに揺れた、強い意志を持った瞳が。
正直。全く、真さんからの好意がわからなかったわけではない。
真さんは確かに優しくて情に厚い人だけれど、八方美人というわけではない。いわゆる、“内側”と“外側”をきちんと分けるタイプといっていい。
私の無職状態だったことも、元彼と寂しい別れをしたことも、真さんにとってはどうでもいいことだったはずなのに。
嫌な顔せずに黙って話を聞いてくれ受け入れてくれるということは、私はある程度“内側”の人間なんだろうな、との自負はあった。